私は、20代後半です。

私は、内気な性格で、大学卒業後、正社員にはなれずに、バイトを転々としており、今はフリーターです。バイトはこんな性格なので、どんな仕事も長続きしません。

私は、大学卒業後、初めてやったパートで社会の厳しさを痛感すると共に沢山の疑問を感じました。

その仕事は、新聞に折り込んであった求人のチラシで母が見つけてきました。仕事内容は『軽作業』で、就業時間は『13時から20時』でした。軽作業の内容が明かされていない上に、時給1100円なので仕事内容が肉体労働などきついものを想像し不安になりましたが、母に言われるがままにも応募し、特に面接もなく採用されました。

ここから先は食事中には読まないでください。

仕事内容は、主に小中学生が学校に提出した、小さな容器に入った尿検査の尿（以下、検体と書きます。）を袋から取り出して仕分けしたり、試験紙を検体に浸して色の変化を見て紙に書き込んだりする仕事です。

私は初め、『軽作業』の中身は、上司から尿検査の検体を扱う仕事と聞いた時に、驚きが隠せませんでした。周りのパート仲間はそれほどまでに驚いていない様子だったので、衝撃的でした。

その上、いざ仕事が始まると、実際の就業時間は、20時過ぎても残業をしている人が大半でした。しかも、皆何一つ文句も言わずに働いているので信じられませんでした。
私が一番遅くまで残業した時は、洗浄当番の日で23時近くになっていました。

私は洗浄当番になった時が一番辛かったです。洗浄当番は、多数のフラスコに入った検体を洗面所に流し、洗面所を綺麗に洗い流す仕事が中心です。この仕事は4時間位かけてやりました。ゴム手袋を二重三重にして付けて作業をしますが、とても抵抗のある仕事でした。この仕事は他のパート仲間とペアでやりましたが、私は仕事が遅かったので相手の人に迷惑を掛けていたと思います。

私は、洗浄当番を言い渡された時に、正直やりたくなくて、その場から逃げ去ろうと考えていました。でも、その洗浄当番さえ終わればその日の仕事は終わりだと分かっていたので、がむしゃらに仕事をこなす事にしました。

私は、仕事に関して思う事で先日の体験を一つお話しします。

私は、先日、ショッピングセンターに某男性歌謡グループのイベントを見に行きました。
無料のミニライブと、CD購入者を対象とした握手会が行われました。
私も参加しましたが、彼らは誰に対しても笑顔で接していました。私に対しても笑顔で握手してくれ、メンバーに話し掛けても快く答えてくれました。たまには彼ら一人一人のタイプではない人が握手に来るかもしれません。私自身もそうだったかもしれません。それでも笑顔を絶やすことがありません。

私は、ふと自分がパートで洗浄当番をやった時を思い出しました。あの時の私は、きっと苦虫を噛み潰したような顔で仕事をしていたんだろうなと思います。

彼らもタイプでない人が来た時は、心ではそのような顔をしていたのかもしれません。それでもそんな心を一切見せずに笑顔で対応する彼らが気の毒にすら思えてきました。

私が逆の立場なら笑顔が持続出来ないかもしれません。
私は、“仕事の相手”が“物”だからどんな顔していようとまだ良かったんです。
でも彼らの“仕事の相手”は、“人間”です。
私は、洗浄当番がどうしても嫌なら逃げ出すことも出来たはず。でも彼らは人間のそれも自分達の大切なファン相手では逃げ出すことは不可能です。

彼らは握手がしたくて歌手になった訳ではないかもしれません。
私も洗浄当番がしたくてあの仕事を選んだ訳ではありません。

仕事だからどんなに嫌なことも耐えなければならないことは重々承知しています。
それでも辛いことは苦痛以外の何物でもありません。

そもそもあの仕事自体、私ではなく母が見つけたので、あまり乗り気がありませんでした。
私は性格も内気なので、他人と一緒に仕事をしていると、仲間に話し掛けられてもはっきりと言葉を返せなかったり、小声になってしまったり、やたらと人目が気になったり、失敗したらどうしようと思うと気が気でなくて、常に手足は震え、心臓がドキドキしている状態でした。1度失敗してしまった事もあって、上司に謝ったら、「気にしなくていいよ」と言って下さいましたが、しばらくは夜になっても眠れずに、仕事でまた失敗したらどうしようと常に考えながら取り組んでいました。。

私は、その仕事は、人の目が気になったり、仕事内容が特殊である事もあり、続ける事が耐えられなくなり、僅か5日間でやめてしまいましたが、最後まで必死に頑張ったつもりです。

私は、母の選んできた仕事に就いたのが間違っていたのかもしれません。

もし、自分で選んだ仕事なら、多少の困難にも耐えられたかもしれません。（現実は、あれから自分で選んでいくつかのバイトをしてきましたが、まだ多少の困難に耐えられる仕事には出会えていません。）

もし、今の子供達が将来仕事に就くなら、私みたいにまず求人広告と実際の仕事の矛盾に疑問を感じ、中にはそれに苦しみ、人間不信になってしまう人も出てくると思いませんか？（私も、あれから社会の矛盾に対して常に疑問を感じています。）

そんな矛盾も仕方ないと思える人なら良いかもしれません。でも、そんな矛盾に心が傷つく人も少なくないと思います。

私がパートで洗浄当番をやった事も、私が見た歌謡グループが多くの人と握手をしていた事も、それが辛くても、仕事の為ならば自分自身の感情を押し殺してでも、仕事に必死に打ち込まなければならないでしょうか？

私は本当に辛いなら、あの時、逃げ出すべきだったんでしょうか？

（ちなみに、パートをやめた直後、学生時代の友達に私がやったパートの話をしたら、「私だったら逃げていたかもしれない。パートなんだし、本当に嫌なら逃げてもやむを得ないと思うよ。正社員になったらそう簡単には逃げられなくなるからね」と言われました。）